The Pretty Thingsへの思い入れ
僕のThe Pretty Thingsへの思い入れは非常に強いものです。彼らのバンドの歴史、音楽の変遷、メンバー構成等々、知れば知るほど、魅力に溢れたバンドは無いと思えます。初期のブルースやR&Bをルーツとしたサウンド、Norman Smithと一緒に作り上げたロックオペラやサイケデリックサウンド、Swansongに移籍後のアメリカンロックに近づいたダイナミックなハードロック。そのサウンドは全てが一流で、サウンドの変遷の裏には語り尽くせぬ魅力的なストーリーがあり、残念なことにあと一歩というところで、売れることが出来なかったけれど、デビューからとうとう50年を迎えたThe Pretty Thingsは僕にとって愛すべきバンドなのです。
チケット入手
それほど好きなバンドだったのに、チケット入手には出遅れるは、体調を崩して2回どころか1回も見に行けないのではという状況でした。ライブも最初から最後まで見ることが出来るかどうか不安な体調でしたが、ここで倒れても悔いは無い、といった感じでした…。(今では体調はすっかり回復いたしました…)
入場前の興奮
初めて行くライブハウスだったのと、コインロッカーの場所を確認したくて、開場の30分程前に到着し、入り口の写真を撮ろうとしたら、階段からどこかでみた外国人がくるではないですか!!そうPhilでした。拙い英語で「こんなところで会えるなんて信じられない。信じられない」と繰り返して、ぷるぷる震えてました。Philが「ショーを見に来たのか?」というので、物凄く楽しみにしていた!と。写真とサインをお願いしても良いか、と尋ねると快諾してくれて、「セルフィー?」とか「これにサインをするのかい?」とニコニコしながら気さくに話しかけてくれました。最後にはPhilから握手を求められて「ショーを楽しんで行ってくれ」と。天にも昇る気持ちとは、こんな感じかなのかと。
その後荷物を片付けていると、また階段から誰かが上ってきたのです!今度はDickだ!!忙しい中無理を言ってサインをいただきました。
開場前に早く行くと、会場付近でメンバーに会うことが出来るなんて都市伝説だと思ってました…。
ライブと今のPretty Things
それほど若い整理番号ではなかったのですが、開場時間にいらしたお客さんがすくなく右寄り中央の前から二番目を確保できました。
2010年の来日時と違い前座バンドはなく、開演時間を15分ほど過ぎてからメンバーが登場しました。6年前は少年に見えたリズム隊のGeorgeとJackもすっかり青年です。というかGeorgeの色気が凄い…。今回、偶然にもライブ前にPhilとDickに会うことが出来たけれど、ステージ上にいる彼らは素敵です。やはりステージで演奏している姿がかっこいい。そして忘れちゃいけないFrank Holland。前回のライブ時はバンド自体に遠慮しているような印象でしたが、今回は何曲かでギターソロを演奏したり、アコースティックセクションではブルースハープを強烈に吹いたりと抜群の存在感がありました。
Dickの足下はよく見えなかったのですが、たぶん歪み系のエフェクターが一つ。ギターはhofnerのVerythin Single Cutawayでlight blue。アンプはVOX。この構成で凶暴な音を奏でていました。アコースティックギターのメーカーはわかりませんでした…。
Frank Hollandは前回の来日時と同じFenderのテレキャスター。こちらはマーシャルのアンプに直に繋いでいるように見えました。George Wooseyのベースは…こちらもわかりませんでした。ショートスケールでフロントピックアップのみ。ビザール感あふれるベースで芯はあるけれど柔らかいという特徴的は音で心地よいものでした。
セットリストは予習していなかったので、最後まで終わって、あれ"Rosalyn"は?"S.F. Sorrow"からの曲、かなり少なかったよね。"Habana Bound"は?1970年代からは無し?とはてなマークが浮かんだのが正直なところでした。"Rosalyn"を演奏しなかったのはゲストミュージシャンの参加が理由だとわかりますが、Pete Tolsonが今年亡くなっているから"Habana Bound"は外して欲しくなかったとか…。
セットリストを見返して気が付いたのは、全ての曲がPhilとDickが関わったものでした。なるほど、そういうことかと。手持ちの音源を調べてみると2014年に"Cries From The Midnight Circus"を演奏したのを最後にDickが関わっていない曲は演奏されていません。1970年代のPretty Thingsの曲が聴けないのは寂しいですが、やはりPhilとDickがいてこそPretty Thingsなんだ、ということなのでしょう。そんなPretty Thingsも「あり」、というかあるべき姿にようやく戻ることが出来たということなのかもしれません。
そんな姿のPretty Thingsの演奏は鬼気迫るものがありました。Dickは相変わらずぶすっとした表情でギターの指板から目を離すことなく、次から次へと恐ろしい音を奏でるし、遠慮が無くなったように見えるFrankはDickとのギターの掛け合いで負けることないソロを弾いている。GeorgeとJackも勢いだけではない演奏でおじちゃんたちを盛り上げている。Philの衰え知らずの喉も凄い。どうしてこんな生き生きした音で演奏をする事が出来ているのか。
それは先ほど書いたあるべき姿のPretty Thingsに戻ったことが大きいと思います。カバー曲が多かった今回のライブ、原点回帰という大げさなものではなく、「Pretty Thingsとして好きなことをしている」というのが彼らの感覚なのかもしれません。だから大好きな曲のカバーを沢山演奏するし、1970年代の曲は演奏しないし、Frankにもソロを任せる。前回では考えられなかったGeorgeとJackをフィーチャーするコーナーもある。バンドの結束としてはPretty Things史上一番強い時なのだと思います。そのメンバー制作された"The Sweet Pretty Things"の素晴らしさと言ったら。
そんな彼らの演奏が悪いはずがありません。最初から最後まで隙もミスもなく、クリエイティブな演奏を楽しむことが出来ました。こんな時間を過ごすことが出来て、本当に幸せだったと。50年前から紆余曲折なんて言葉で片付けられないほどの困難を克服してきた愛すべきバンドが目の前で演奏し、その演奏が最高なのですから。
Setlist
- Honey, I Need
- Mama Keep Your Big Mouth Shut
- Big Boss Man
- The Same Sun
- Buzz The Jerk
- Alexander
- Defecting Grey
- S.F. Sorrow Is Born
- She Says Good Morning
- I See You
- Mr. Evation
- I Can't Be Satisfied
- Come On In My Kitchen
- Little Red Rooster
- You Can't Judge A Book By The Cover
- Don't Bring Me Down
- Mona
- Pretty Thing
- Who Do You Love
- I Wish You Would
- Drum Solo
- Mona
- Midnight To Six Man
- L.S.D.
- Old Man Going
- Judgement Day
- Road Runner
After Show
そんな愛すべきバンドメンバーと少しだけ話す機会がライブの後のサイン会でありました。サイン会の待ち列の横をメンバーが通る度に起こる暖かい拍手はバンドが日本で愛されている証拠だと思います。
自分のときにはYamaha SBV-500のピックガード、Pretty Things50周年記念ボックスのBouquets from a Cloudy Skyに付属のプリントと最新アルバムにメンバーからのサインをもらいました。ピックガードは開場前にPhilとDickにサインを書いてもらっていたので、それをPhilが覚えていて、お前か!みたいにほほえんでくれたり、ステージ上では無表情のDickがにっこにこで一緒に写真を撮ってくれたりとうれしいことばかり。
そしてそしてEnglandのCDをFrankに渡すと、本当にうれしそうにCDをみて、PhilにEnglandのCDだよ、みてみて!みたいな感じで喜んでもらえました。Frankはピックガードにサインをした後、これ、弦を張って弾くのかい?とかいろいろ話しかけてくれて、うれしかったです。その場を立ち去るのが本当に辛かったです。
Frankの手にあるのがEnglandのCDです。
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